HaLuKaの日記

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全体的に中二病な桃太郎 前編

僕の経験から「中二病とはこういうもの」を割り出しました。


―時は銀河西暦1450年

つい数十年前まで争いが起こっていたというのにその村は平和を感じさせる雰囲気を漂わせていた。

村が平和でいられるのは銀河‘星雲’団、第二支部部長「翁=デシ=クロノス」の存在があったからだ。

しかしそんな彼も今では当時の勇ましさは老いにより失い、ただの老人となってしまった。

彼、翁=デシ=クロノスは銀河‘星雲’団第三支部元部長オキダ=デシ=ダムキナと既に婚約を済ませている。

既に戦闘から一線を退いた彼ら夫妻はとある村でただの老人として暮らしていた。

翁はスペクター山にて枯れ木を集めに、オキダは汚れた布を清めに聖なる川“スィートイ川”へ向かった。

オキダが川で布を清めていると遥か・・・数キロほど先であろうか。明らかに怪しいものが見えた。

蛍光色をした謎の物体がとんでもない速さで迫って来るのが見えたのである。

もの凄い速さで迫ってくる蛍光色の物体。数キロほど離れているがオキダにははっきりとそれが見えた。


「(あれは・・・桃?)」

オキダの目にははっきりと桃が見えた。それも通常の何倍、何十倍、何百倍と大きいのだ。

こんなものがこの速度でこの川を伝って村まで流れてしまったら大変なことになる。

オキダは戦闘から身を引いた今も護身用として常に持ち歩いている拳銃にそっと手を伸ばした。

その拳銃は普通の拳銃ではない。出てくるのは弾ではなく鉤爪のついた合金のワイヤーが出てくるのだ。

拳銃を片手で軽々と構えて狙いを定める。その眼光は70を過ぎた婆とは思えないものであった。

既にもう桃は近いところまで流れてきている。オキダは引き金にそっと、しかししっかりと指を掛ける。

狙いは定まった。あとは桃がこちらへ流れてくるのを待つだけだ。

桃が作り出す波の音が徐々に、徐々に近づいて来る。・・・今だ。

小さい破裂音とリールから伸びていくワイヤー。鉤爪はしっかりと桃に突き刺さっている。

オキダの未だ衰えを知らない肉体をもってしても桃を止めることは容易ではなかった。

桃によってオキダの強靭な腕が引っ張られる。少し苦しい顔をしてから、沖田は腕に力を込めた。

桃はオキダの異常なまでの腕力によって宙に浮き、少し経ってから地面に落ちてきた。

「これは・・・翁に、食わせるか。」

体の何倍もある桃を片手で軽々と持ち、オキダは家への道を辿っていった。



―前編終わり。