「私となら…どうなの?」
耳を疑った。一体どう言うことなんだ。
「私は…私は買ってもらった時に運命の人なんだ、って確信したの。」
僕と全く同じ理由だ。そのことに彼女の強い愛情を感じた。
廊下のタイルの色が、さらに紅く染まっていく。
ジェットストリームとは違うが整ったフォルムとツヤのあるインク。
勝るとも劣らない書き味の良さ。
長い沈黙。少ししてから僕は時間が欲しい、と頼み込んだ。
瞬間、彼女の顔に先程よりも少し緊張の色が見えた。
「…うん、わかった。いい答えを期待してるよ!」
もう真っ暗になってしまった廊下で、彼女はそう言った。
帰路につく。電車の窓から外を眺めているうちに軽くため息が出た。
家に着くなりベッドに寝転がる。今日あったことを牛のように反芻していった。
考えていくにつれ、答えの形が決まっていく。答えが具現化していく。
答えは決まった。あとは明日伝えるだけだ。
…放課後。アクロボールに呼ばれて廊下に出る。
「…どう?答え、決まった?」
僕は重々しく頭を下げる。答えを急かされるので簡潔に言うことにした。
「…僕は」
「……僕は」
「よろしくお願いします。」
告白されて答えたがどうも反応が全くない。嫌だったのかと不安になって頭を上げると、
彼女は、泣いていた。
泣き止むのを待って話を聞くと感情が涙にすぐ現れるタイプらしい。
「ようやく…ようやくなんだ…」
泣きつつも笑う顔に可愛さを感じ、その日は一緒に帰った。
ハッとして見た電車の窓から見える景色には、色がついていた。
それからは毎日一緒に帰った。休日は海にも行って遊んだ。
そんな日が、ずっと、ずっと続くと思っていた。
とある日の放課後、筆箱が異常に騒がしかった。僕はあの日からJストリームは筆箱に入れていない。
筆箱が騒がしい原因に愕然とした。そこには普段おとなしい蛍coatがすごい形相で騒いでいた。
蛍coatはペン先の部分が樹脂で囲われており、定規を汚さずに済むのだ。
怒りを押し殺した声で「話がある」と短く告げると廊下に呼び出された。
数日前に似たようなことがあったなぁ、とデジャヴ感を隠せずに廊下に出た。
蛍coatはいつもと違う、荒々しい口調で僕に話をしだした。
「なんで…なんでお前はJストリームの思いを…!」
そこで僕が蛍coatに告げられたことは、耳を疑うような話だった。
※この物語はフィクションです。